<「定期借家契約」と「定期借家制度」の違い>
一般的によく使用される「定期借家権」は、正確には法律上の用語ではなく「慣例的通称」である。
●定期借家契約:契約で定めた期限が来ると契約が必ず終了する借家契約のこと。
●定期借家制度:良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法によって創設された制度のこと。(平成12年3月1日施行)
<従来の借地契約における問題点>
●「正当事由」と「法定更新」
従来の借家契約は「借家人」にとても有利な法律だった。
具体的には、賃貸借契約の期限がきた時点で、賃貸人側から契約の解除を申し入れても「正当事由」がなければ「法定更新」によって更新されてしまうというもので、しかも更新された後の賃貸借契約は「期間の定めのないもの」となった。
「正当事由」は極めて稀な場合にしか認められず、結果的にいつまでたっても立退きを求めることが困難となるのが実情だった。
また、どうしても立退いて欲しい場合は、それまでに受け取った賃料から考えると引き合わないような、高額な「立退き料」を支払わざるを得なかった。
※「正当事由」
・賃貸人が自らその建物の使用を必要とする事情等を指し、借地借家法が定める「正当事由」の判断基準は主に以下の①〜⑤の通りとなる。
①貸主及び借主が建物を必要とする事情
②賃貸借に関する従前の経過
③建物の利用状況
④建物の現況(老朽化等)
⑤貸主の立ち退き料等の提供
<定期借家制度の仕組み>
「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」による「定期借家制度」では、賃貸借契約期間が満了すると、契約は更新されずに完了することとなった。
(「正当事由=不要」「法定更新=無し」)
本法により、貸主は期間満了によって立退き料等の負担なく、建物を返還してもらえることとなった。
<結論>
従来の制度ではあまりにも「借家人に有利」な状況が続いていた為、オーナーは「貸したら返ってこない」「貸すくらいなら、そのままにしている方が良い」と考えるようになっていた。
その問題を解決するためにできたのが、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」による「定期借家制度」である。
本制度は貸主も借主も「フェアな条件」で賃貸借契約を結ぶことが可能になり、更に広くは、近年、日本で問題視されている「空き家対策」にもなっている。